Happy Growth Magazine
9月 28

次のステージを求める前に——ベンチャーの旨味と“成長”のリアル。株式会社空の取締役が語った

仕事に慣れ、成果の出し方が分かってきて、社内での順調な昇進が見えてきた頃。立ち止まって、“自分の人生を考えるタイミング”ではないでしょうか。最近では、大手神話が揺らぎ、創業まもないベンチャー企業への転職報告も珍しくはなくなりました。

岡野 周平と田仲 紘典は、新たな挑戦の場として、大企業からベンチャー企業である株式会社空を選びました。その後、空が『週刊東洋経済』の特集「すごいベンチャー100」や、『経済界』の特集「進撃のスタートアップ」への掲載など、勢いが増していくなかで、刺激的な毎日を送っているそう。

そんなふたりに、ベンチャー企業だからこそ感じる醍醐味や、飾らない“リアル”な実情を伺いました。これから転職を考えている人の参考になりましたら嬉しいです。

スピード感と変えられる範囲に悩んだ前職。「理想の組織」を作りたかった

ー大企業からのジョブチェンジとのことですが、転職の背景を教えてください。

岡野 周平/株式会社空 取締役
2013年4月より楽天株式会社で、約3年半ECコンサルタントとして従事。主に関東圏の食品関連企業の売上UPをサポート。2017年2月より、株式会社空にてセールス部門の統括を担う。

岡野:もともと約3年間、楽天株式会社で働いていました。在籍しているときから高校の同級生である松村(株式会社空 CEO 松村 大貴)に「プライシングに特化した事業を立ち上げる。一緒にやらないか?」と誘われていたんです。話を聞いて、アイディアが壮大であるところ、未だ誰も成し遂げていないところに魅力を感じたんですよ。

実は、楽天時代から、「入社3年を目処に独立しよう」とは考えていまして。楽天時代の経験を生かして個人のコンサルティング会社を立ち上げるのか、空に入社してチームで成し遂げるのか、天秤にかけました。結果、勝ったのは「チームで未踏の領域を開拓したい」という思い。その翌日には会社を辞めることを告げ、3カ月後に退職しましたね。

田仲 紘典/株式会社空 取締役 兼 CPO
立命館大学大学院卒業後、ヤフー株式会社にてサーバ運用や社内システム開発、CICDを担当。2016年6月より株式会社空のメンバーとして参画。エンジニア領域に加え、人材教育にも携る。

田仲:僕は、約4年間ヤフー株式会社にてエンジニアとして働いていました。松村はヤフー時代の同期。松村が会社を辞めたあと「システムを作れないか?」と相談が来たんです。ヤフーの頃から松村の活躍を見て尊敬していたし、フィーリングも合う。まずは副業で手伝うことにしました。

その後、スタートアップ企業が集まるビジネスコンテストに入賞し、事業の未来を確信して、入賞した翌日には退職の意思を会社に伝えていましたね(笑)。

ー新たな挑戦の場をベンチャー企業に移すからこそ、期待したことはありました?

岡野:そうですね…ひとつめは「事業の根っこの部分から携われる」こと。商品を作って売り方を考え、販売後のサポートもするなど、一連の流れに携われるのは魅力的だと思っていました。大企業の場合、それぞれの役割が明確なので、どこかのパートだけしか担えなくって。自分が変えうる範囲の限定さに前職で悩んでいたからこそ、かもしれませんね。

ふたつめは、成功したときのリターンが大きいこと。大企業の場合、事業が成功したら会社は大きくなるけれど、ボーナスや給料へのリターンは少ないのが現状。しかし、ベンチャー企業であれば、個人にもリターンがしっかり反映されますから。

田仲:私も2点ありますね。ひとつめは、自分の力量を高めていける環境であること。「キャリアステップのスピードを一刻でも速く」と思っていた私は、一段一段上がっていく前職のスピード感に、物足りなさを感じていたんです。空では、事業成長をど真ん中で担えるからこそ、スピーディにパワーアップできると思いましたね。

ふたつめは、理想とする組織を作れること。前職時代から、上下関係がなくて同じ土俵で仕事ができ、リスペクトし合える組織がいいな、と思っていました。メンバー全員がCxO(最高〇〇責任者)レベルで立ち向かえるみたいな。そんな組織で戦っていくほうが、ぜったいに面白い。今、空にはエンジニアのメンバーが6名いますが、現にトップダウン形式ではなく、自主的に仕事を進めています。「部下」という言い方もしない。全員がパートナーなので。

空のvisionは「Happy Growth」。経済的な成長と幸せな働き方は両立できることを信じ、革新的なサービスをつくりながらも、幸せな働き方を世界に広めることに重きを置いている。

「成長の芽を摘まないよう、こらえて見守る」中長期の視点で動ける自分へ

ー転職後は環境が大きく変わったと思いますが、どのようなターニングポイントがありましたか?

岡野:もともと私がひとりで担当していた営業業務を、組織拡大とともにメンバーに引き継いだことですね。最初は営業に同行してもらい、私の見よう見まねで進めてもらっていたんです。でもなかなか手離れしない感じがあって。
空には「合理的な理想主義」という理想を達成するために、無駄を省き合理的に考えるカルチャーがあるのですが、その時は合理的に考えられていませんでした。自分でやってしまう、人に任せるのが苦手な一面が出てしまって。

でも「世界の料金設定にテクノロジーで変革を起こしたい」というビジョンの大きさと対比したとき、私のやり方のままでは叶えることは難しい。スピード感が圧倒的に足りない、と気づいたんです。

そこからは、いままで感覚だけでやっていた営業を、誰にでも落とし込める抽象的な概念と、再現性のある形に固めていきました。メンバーの成長の芽を摘まないように、グッとこらえて見守るようにもなりましたね。

よくいう言葉ですが、魚を釣ってあげるのではなく、魚の釣り方を教えてあげる。すると、どこの海や川に行っても自らの力で魚が釣れるようになる。それが中長期視点では非常に重要なのだと痛感しています。まだやり方を模索しながらではありますが、最近ではプレイヤーとしての時間が減って、事業戦略など、経営レイヤーで考えるべきことに時間を割けるようになりつつありますね。

建前と遠慮のない対話から、顧客の「本当のニーズ」が見えてきた

ー田仲さんは、どのようなターニングポイントがありましたか?

田仲:自分たちが50%くらいの成果物だと思っていたものが、顧客にとっては真に価値があるものかもしれない、と気づけたことですかね。エンジニアは技術職なので、時間をかけて120%の力を発揮したいマインドなんですよ。でも、時間と労力をかけたからといって、必ずしも顧客が求めるものを届けられているとは限らないんです。

これに気づけたのは、セールスを担当していた岡野の存在があったから。岡野とサービスのブレスト会議をしたとき、私が「新しい技術を投入したいから、時間が欲しい」と言ったことがありました。そこで岡野から「顧客は、ウラ側の技術には興味がないよ」と言われたんです。まあ、そうですよね。でも、技術に真剣でいるほど、忘れてしまいそうになる。

岡野:正直、エンジニアに「技術力の高さがすべてではない」と伝えることにはためらいがありましたよ(笑)。でも、田仲とのブレスト会議で、“何かが食い違っている感覚”がずっとあって。それを突き止めたくて、話し合っているうちに、見えてきたんですよね。

田仲:顧客第一に考えているつもりで、分かっていなかったんだな、と気づかされましたね。顧客の「本当のニーズ」をいちばん理解したセールスが、顧客とエンジニアの橋渡し役に入ってくれると、こころ強いです。

とはいえ、現状維持ではなくステップアップし続けるためにも、新しい技術にどんどん挑戦していくことも必要。自己満足にならないよう注意しつつ、エキサイティングに働ける環境を作るのは経営側の役目ですね。
それに、空では「Live Direct」という本音・本質・真実を大切にするカルチャーがあるんですが、岡野が実際に、建前や遠慮じゃなくて、考えをまっすぐに伝えてくれて、本当に良かったな、と思います。ベンチャーは、短期決戦の連続で、大企業にとってはいちプロジェクトかもしれませんが、ベンチャーはスピーディに価値を生み出さないと、潰れますから。

空が大切にしているコアバリューのひとつ

次のステージに活躍のフィールドを求める“その前”に——

ーおふたりは、どのような人であればベンチャー企業への転職をオススメしますか?

岡野:あくまで全ベンチャーというよりは「空の立場」にはなりますが、能動的に考えて、自ら仕事を掴み取っていける人が合っていると思いますよ。

やっぱりベンチャー企業は成長段階のため、環境が整っていない部分も大いにあります。「入れば成長できるはず」と過度に期待したり、受け身のスタンスだったりでは、正直合わないと思いますね。成長のための教育や研修を望む人というよりは、自ら事業を作っていきたい人の方が、いいと思います。

そういう人であれば、裁量もどんどん渡されるだろうし、自分が入ることで組織が変わることを感じられて、楽しいんじゃないでしょうか。まだまだ空も、メンバーがひとり増えることで、劇的な変化・影響がもたらされるフェーズですしね。

もちろん、明日が見えないプレッシャーはありますが、そうしたプレッシャーのかかり方が段違いだからこそ、おもしろいんです。自分にかかる負荷が、成長を加速させる材料になるな、と思います。そう捉えられるから、今ここにいるのかもしれませんが(笑)。

田仲:そうですね。大企業でよくある「基礎を固めたうえで、練習をし、最後にアウトプットしましょう」っていうスピード感は皆無。分からないことがあれば自分で本を読んで、とりあえずやってみる。常に走りながら学んでいく感じなんです。だから、分からない状況でも物怖じせず、前のめりになれる人が合うのではないでしょうか。

岡野:あと私は、前職で後悔していることがひとつあって。結局退職しましたが「もっと自分の努力で、環境をより良くできたのではないか」という気持ちが今も残ってはいるんです。

次のステージに活躍のフィールドを求めることは、すなわちいまの状況に蓋をすること。新しいステージに行くことを考えているなら、ひとまず「いまの環境でできることはやりきったのか」を自問自答できるといいなと思います。それでも次にチャレンジしていきたいなら、ぜひ新しい一歩を踏み出してほしいと思います。

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執筆:柏木まなみ 企画・編集:水玉綾 撮影:小澤 彩聖